
第1章 資本と世界を知る
お金を支配するすべを身につけるまで、私たちはお金に支配されている。
投資の方法を語る前に、まず私たちが生きているこの世界をよく見ておきましょう。お金はどこから来て、どこへ行くのか。誰がお金を支配し、誰がお金に支配されているのか。それが見えてはじめて、なぜお金について学ぶのかがわかり、途中で投げ出さずに歩み続けることができます。
一、富を手にするまでの過程を知る
経済的自由にたどり着くまでには、3つの過程を通ります。
1. 目覚め
豊かになる第一歩は、考え方を変えることです。富の力は、あなたに本当の自由を与えてくれる——まずそれを知ってください。そのうえで自分のお金の目標を決め、なんとなく日々を過ごすのをやめましょう。
2. 学び
お金の目標は人それぞれです。自分の目標を達成するには、お金の管理と投資を学ばなければなりません:
- お金の管理は「出ていくお金を絞ること」:貯蓄、家計簿、税金の計画を通じて、お金の行き先をひとつ残らず把握します。
- 投資は「入ってくるお金の源を増やすこと」:長く成長し続ける資産にお金を置き、複利に働いてもらいます。
学びは一生続けるものです。ただし、特に気をつけてほしいことがあります。学びの段階こそ、いちばん危険な段階なのです。多くの人は気がはやって落ち着いていられず、投資の考え方や方法がまだ固まらないうちに、いきなりお金を金融市場に投じてしまいます。その結果、軽くても経済的自由が大きく遠のき、悪ければ取り返しのつかない損失を出して、そのまま立ち直れなくなってしまいます。
3. 行動
行動するには、4つの勇気と規律が必要です:
- 誘惑に向き合い、衝動買いを抑える勇気
- 長く貯蓄を続け、最初の元手を貯める忍耐と規律
- 長いあいだ耐え、投資の機会を待つ勇気
- 誰もが恐れているときに、それでも買う勇気
成功哲学の作家ナポレオン・ヒルは『思考は現実化する』の中で、こう書いています。「願うだけでは、富はもたらされない。しかし、執念となるほどの心の状態で富を望み、富を手に入れるための明確な方法と手段を計画し、失敗を認めない粘り強さでその計画を支えるなら、富はもたらされる。」
結局のところ、すべてはあなたの心の中にある願いの強さで決まるのです。
二、ほとんどの人は「お金の読み書き」ができない
この節の論点は、ジョン・リー『富はこうして育つ』を参考にし、データは最新の研究に置き換えています。
米連邦準備制度理事会(FRB)の議長を18年あまり務めたアラン・グリーンスパンは、生前、金融教育は小中学校から根づかせるべきだと何度も訴えました。取り返すのに何年もかかるような誤ったお金の判断を、若い人たちが避けられるようにするためです。(彼が「金融の読み書きができないことは、文字の読み書きができないことよりも恐ろしい」と言ったという話が世間に出回っていますが、元の出典は見つかりません。)
「お金の読み書きができない」とは、どういうことでしょうか。私の考えはシンプルです。どれだけ本を読み、どれだけ字を知っていても、お金がどう入ってきて、どう出ていき、どうやって自分のために働いてくれるのかがわからなければ、お金については読み書きができないのと同じです。お金を稼ぐ力と、お金を手元に残す力は、別のものです。私がいちばん心配しているのは時間です。今日、少しわかっているか、少しわかっていないかの違いは、目には見えません。けれども複利は、そのわずかな差を大きく広げます。20年後には、まるで違う二つの人生になっていることが少なくないのです。
この問題は、一部の人だけに起きているわけではありません:
- ウォール街のある米国も例外ではありません。2026年の全米金融リテラシー調査(TIAA Instituteとジョージ・ワシントン大学による「P-Fin指数」)によると、米国の成人は基本的なお金に関する28問のうち平均で47%しか正解できず、過去10年で最低でした。
- プロスポーツ選手は驚くほどの年俸を得ていますが、引退後にお金に困ることが少なくありません。経済学者が約2,000人のアメリカンフットボール(NFL)選手を調べたところ、引退後12年以内に約16%が破産を申し立てており、しかも破産の確率は、稼いだ金額やプレーした年数とほとんど関係がありませんでした。この研究には衝撃を受けました。たくさん稼いでも、手元に残るとは限りません。結果を決めるのは、お金を理解しているかどうか、そしてどう暮らすかなのです。
- では台湾はどうでしょうか。台湾金融研訓院の2022年『台湾金融生活調査』によると、約3割の人は金融にまったくなじみがなく、約5割は金融に自信を持てていませんでした。
ジョン・リーも『富はこうして育つ』の中で、彼が出会った人の多くは誤ったお金の考え方を持ち、財産のほとんどを家と預金に置いていて、老後の備えをほとんどしていなかったと書いています。
ジョン・リーの結論は、節約は出発点であってゴールではない、お金を貯めたら、それがどう働くのかを理解し、お金にお金を生ませなければならない、というものです。私も同感です。この一歩が欠けていれば、どれだけ長く貯めても経済的自由にはたどり着けません。
三、ほとんどの人は資本主義の仕組みを知らない
この節の考え方は、主にジョン・リー『富はこうして育つ』によるものです。
貧しさと豊かさの分かれ目は、学歴でも、どれだけ努力したかでもなく、手元に資本があるかどうか、そしてその資本を使いこなせるかどうかにあり、いったん差がつくと、その差はひとりでにどんどん大きくなっていく——ジョン・リーはそう考えています。私も同感です。次の二種類の人が毎日何をしているかを比べるだけで、それがわかるからです。
まず、あなたが毎日仕事で何をしているかを考えてみてください。自分の時間と体力を、給料と交換しています。これは「時間でお金を稼ぐ」ことです。時間が止まれば、収入も止まります。
次に、会社のオーナーや株主が何をしているかを考えてみましょう。彼らはお金を出して会社をつくり、人を雇って仕事をしてもらいます。会社が利益を上げれば、配当を受け取り、株価の上昇を享受します。これは「人に稼いでもらい、お金にお金を稼がせる」ことです。本人が休んでいても、お金は動き続けています。
この二つの役割は、ぶつかり合うものではありません。昼間は給料をもらう人として働き、夜にはその給料の一部を株に換える。そうすれば、あなたは同時に株主でもあるのです。できるだけ早く、両方の役割を担ってほしいと思います。
結局のところ、資本主義の世界は人を二種類に分けます。お金に働いてもらう人と、お金のために働く人です。どちらになるかは、自分で選べます。
四、ほとんどの人は、自分がお金に支配されていることに気づいていない
広く出回っている言い回しがあります。米国の元国務長官ヘンリー・キッシンジャーの言葉だとよく言われるものです。「石油を支配すれば、すべての国家を支配できる。食糧を支配すれば、人類を支配できる。通貨を支配すれば、全世界を支配できる。」キッシンジャーの演説や著作の中に、この言葉の出典は見つかりません。それでも、この言葉が指し示す事実ははっきりしています。お金とは、力なのです。
世界の富の分配は、昔からきわめて不平等です。
- 80対20の法則(パレートの法則、Pareto principle):およそ20%の要因が、結果の80%を左右します。
- 国連開発計画(UNDP)の『人間開発報告書1992』は、1989年のデータをもとに、世界で最も豊かな20%の人々が世界の所得の82.7%を手にし、最も貧しい20%はわずか1.4%しか得ていないと算出しました。
- 国連大学世界開発経済研究所(UNU-WIDER)の2006年の研究(2000年のデータで算出)によると、世界で最も豊かな2%の成人が家計の富の半分以上を持ち、最も豊かな10%が85%を持っていました。研究チームは世界の富のジニ係数を0.89と推計し、こんなたとえを示しています。この不平等の度合いは、10人で100ドルを分けるときに、1人が99ドルを持っていき、ほかの9人で残りの1ドルを分け合うようなものだ、と。
- 最新の『世界不平等報告書2026』(2025年のデータ)によると、世界で最も豊かな10%が富の約75%を、最も豊かな1%が約37%を持ち、最も貧しい半分の人々が持つのは約2%にすぎません。
お金を支配できなければ、あなたは他人のお金に支配され、お金のために働く人になってしまいます。
五、ほとんどの人は、自分が老後に貧しい暮らしを送ることになると知らない
働いて稼ぐだけでは、ほとんどの人は年を取ってから、収入が支出に追いつかない生活に直面します。台湾の公的統計を使って計算してみましょう。
以下では、最新の公式統計を使って、「中央値」にあたる会社員のケースをざっと計算します(すべて現在の貨幣価値で計算し、投資のリターンは考えません):
| 項目 | 数字 | 出典 |
|---|---|---|
| 1人あたり年間可処分所得(中央値) | 約36.7万台湾ドル | 主計総処 2025年家計収支調査 |
| 平均貯蓄率 | 23.96% | 同上 |
| 40年働いて貯まるお金 | 36.7万 × 40年 × 23.96% ≈ 352万台湾ドル | 著者の計算 |
| 台湾の労働保険の老齢年金・平均月額(台湾の制度の例です) | 19,312台湾ドル | 労働保険局 2025年統計 |
| 65歳で退職し、85歳まで(20年間)受け取る労働保険年金 | 19,312 × 12 × 20 ≈ 463万台湾ドル | 著者の計算 |
| 合計 | 約815万台湾ドル | |
| 老後20年、毎月の生活費3万台湾ドル | 720万台湾ドル | 仮定 |
| 老後20年、毎月の生活費4.5万台湾ドル | 1,080万台湾ドル | 仮定 |
(台湾の人々の平均寿命はすでに81.27歳に達しています〔内政部「2025年簡易生命表」〕。それより長生きする人も多いため、20年で計画しています。)
毎月3万台湾ドルしか使わないなら、なんとか足りるように見えます。しかし注意してください。この352万台湾ドルは「40年間働いて、一銭も手をつけなかった」場合にようやく貯まる金額です。しかも、住宅の購入、子育て、医療や介護、インフレは、まだ計算に入っていません。老後を少しゆとりをもって、たとえば毎月4.5万台湾ドルで暮らしたいと思っただけで、200万〜300万台湾ドルの不足が生じます。労働者退職金の新制度による個人口座(台湾の制度の例です)で一部は補えますが、ほとんどの人はやはり投資によって、お金に働いてもらう必要があります。
用語ミニ辞典
- 可処分所得:すべての所得収入から、利息、社会保険料、税金、罰金、寄付や贈答金などの非消費支出を差し引いた、日々の生活費にあてられる所得(行政院主計総処の定義)。
- 家計貯蓄率=(可処分所得-消費支出)÷ 可処分所得 × 100%。
仕事の収入と労働保険の給付だけでは、ほとんどの人は晩年、よくてなんとか収支がとんとんになる程度で、何か予想外のことが起きれば赤字になります。足りない分は、投資で補うしかありません。
六、お金で、あなたの時間と自由を買い戻す
世間にはこんな言葉が出回っています(李嘉誠〔リー・カシン〕の言葉だとよく言われますが、出典は見つかりません)。30歳までは体力と知力で稼ぎ、30歳を過ぎたらお金でお金を稼げ。
お金を支配するすべを身につけるまで、私たちはお金に支配されています。
お金を支配できなければ、時間も、体も、心も、自由も、暮らしも、そして人生におけるほかの意味ある大切なことも犠牲にして、お金のために働かなければなりません。表向きは自由でも、実際には資本に支配されているのです。
お金の力は、より多くのものを買えることにあるのではありません。自由を買い戻し、人生を買い戻してくれることにあります——お金という、それ自体には価値のないもので、人生で本当に価値のあるものを取り戻すのです。
同じようにお金を使っても、使うほど貧しくなる人もいれば、使うほど豊かになる人もいます。違いは、お金をどこに使うかです。収入を食いつぶすものを先に買うのか、それともまず貯めて、収入を生むものを買うのか。
『金持ち父さん 貧乏父さん』の著者ロバート・キヨサキは、「資産と負債の違いを知り、資産を買わなければならない」と言い、それが第一のルールであり、唯一のルールだとしています。この本での資産と負債の定義は、とてもシンプルです。「資産とは、私のポケットにお金を入れてくれるもの。負債とは、私のポケットからお金を取っていくもの。」
- ある人は給料を受け取ると、まず目の前の楽しみを満たします。ローンで車を買い、カードで買い物をする。毎月の請求書はどんどん増え、借金を返すために、もっと必死に働くしかなくなります。
- 別の人は給料を受け取ると、まず一部を貯めて資産を買います。資産は毎年少しずつ収入を生み、その収入でさらに資産を買う。雪だるまのように、ゆっくりと大きくなっていきます。
では、普通の人はどうすれば「人に稼いでもらう」ことができるのでしょうか。いちばん簡単な方法は、市場全体を買うことです。市場全体に連動するインデックスETFを買えば、何百、何千もの企業の小さな株主になれます。そうした企業で働く優秀な人たちが、あなたが休んでいるときも眠っているときも、あなたのために働いてくれるのです。これこそ、巨人の肩の上に立って前に進むということです。(なぜ私が最終的に全市場インデックスETFだけを選んだのかは、第5章で詳しく説明します。)
七、お金の主人になる
お金は、あなたの最も忠実な召使いです。決してあなたを裏切らず、行けと言った場所へ行き、休むことなくあなたのために働き続けます。
お金の主人になるとは、自分のお金によい仕事を見つけてやり、昼も夜も、何年にもわたって働かせ、きちんと成果を出させることです。
資本の世界では、あなたの力の大きさは、どれだけの「お金の部隊」を率いているか、そして部隊にいるお金の一つひとつにきちんと仕事を割り当て、いつでも効率よく働かせているかで決まります。
韓国の投資家ジョン・リー(John Lee)は『富はこうして育つ』の中で、こう指摘しています。お金は眠る必要がない。あなたが持っている株の向こうには、あなたが休んでいるあいだも出勤している社員たちがいるのだ、と。韓国系の起業家キム・スンホは『お金の秘密』の中で、さらに強い言葉を使っています。投資せずに寝かせておいたお金は、インフレに少しずつ食われていく、と。二人の言っていることは、私には同じことに読めます。お金を遊ばせておいてはいけない、ということです。
資本家になり、自分だけのお金を生む機械を持つこと。ほとんどの家庭にとって、その機械は自分で起業することでなくてかまいません。安定した貯蓄で、市場全体を長く買い続ければいいのです。
本章のポイント
- 経済的自由までには、目覚め・学び・行動の3つの過程があります。学びの段階が最も危険です。考え方がしっかり固まる前に、いきなり市場に飛び込まないでください。
- ほとんどの人は、お金の読み書きができません。たくさん稼いでも手元に残るとは限らず、結果を決めるのは、お金を理解しているかどうかと、どう暮らすかです。
- 資本主義の世界では、資本家は人に稼いでもらい、お金にお金を稼がせます。会社員も給料を投資に回せば、同時に資本家になれます。
- 仕事の収入と台湾の労働保険だけでは、ほとんどの人は老後に収支が赤字になります。その不足は投資で補う必要があります。
- まず貯蓄し、資産を買い、お金に働いてもらう——それがお金の主人になるということです。
出典(参照日:2026-10-12)
- ナポレオン・ヒル《思考致富》(邦訳『思考は現実化する』;原書 Think and Grow Rich、The Ralston Society、1937年)第2章「Desire(願望)」。引用は英語原文からの訳。
- グリーンスパンの金融教育に関する発言:米連邦準備制度理事会、2002-02-05の上院証言、2003-04-03の講演(federalreserve.gov)。
- TIAA Institute–GFLEC P-Fin指数 2026年版(gflec.org)。
- Carlson, Kim, Lusardi & Camerer (2015), "Bankruptcy Rates among NFL Players with Short-Lived Income Spikes," NBER Working Paper 21085。
- 台湾金融研訓院《2022 台灣金融生活調查》(仮訳『2022年台湾金融生活調査』;『数位時代』の報道)。
- 国連開発計画『Human Development Report 1992』。
- UNU-WIDER (2006), The World Distribution of Household Wealth(国連プレスリリース 2006-12-05)。
- World Inequality Report 2026(wir2026.wid.world)。
- 主計総処 2025年家計収支調査(中央通訊社 2026-08-14の報道)。
- 内政部 2025年(民国114年)簡易生命表(2026-08-24 統計通報)。
- 労働部労働保険局 2025年 労働保険老齢年金統計(bli.gov.tw)。
- ロバート・キヨサキ《富爸爸,窮爸爸》(中国語版:高寶國際、2001年;邦訳『金持ち父さん 貧乏父さん』;原書 Rich Dad Poor Dad、初版1997年。引用は英語原文〔Plata Publishing版、2022年〕からの訳)。
- ジョン・リー《財富是這樣養成的》(遠流、2021年;仮訳『富はこうして育つ』);キム・スンホ《金錢的祕密》(三采、2021年;邦訳『お金は君を見ている――最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』吉川南訳、サンマーク出版、2024年)。